
問1 対象構造物は、関西地方の内陸部に建設された、約30年を経過したRCラーメン構造の5階建集合住宅である。この建物に発生している変状の概要として、①北面外壁に最大0.6㎜幅のひび割れ、②4階部分の柱・梁に最大1.5㎜幅のひび割れ、③4階踊り場コンクリートに最大1.0㎜のひび割れと白っぽいしみのあとが見られる。これらの変状の原因として考えられるものを下記に記述する。①乾燥収縮ひび割れ。その根拠として、日射の影響を受けやすい外壁に発生しており、発生しているひび割れの幅が最大で0.6㎜と比較的小さく、外壁に全体的に発生していることや、打音検査によって、いずれの箇所にもモルタルの浮きが生じていないことから、内部鉄筋の腐食によるものではない可能性が高いことである。②内在塩分による塩害。その根拠として、表1の全塩化物イオン量の調査結果より、4階部分のみ高濃度となっており、腐食発生限界塩化物イオン濃度を超えていることや、表1の中性化深さ試験結果より、同じく4階部分コンクリートの中性化の進行が大きく、塩化ナトリウムによる高アルカリの供給の可能性があること、写真1,2より、鉄筋が著しく腐食していることである。③アルカリシリカ反応。その根拠として、建設時期が1974年であり、アルカリシリカ反応抑制対策がとられる以前の構造物であり、有害鉱物を含む骨材がコンクリートに含まれている可能性があること。内在塩分により高アルカリが供給され、また、踊場であることから降雨による水分の供給を受けやすい箇所であったこと。ひび割れの発生箇所が、鉄筋位置とは関係ない箇所に発生していること。その結果として、表1コンクリート物性試験結果より、圧縮強度やヤング率が低下していること。白っぽいしみのあとは、アルカリシリカゲルの可能性があることである。
問2 原因を特定するために必要な調査項目として、①既存資料の調査を行う。これにより、4階部分に使用されたコンクリートの配合設計書等により、細骨材に海砂が使用されていることを確認する。②4階踊り場からコアを採取し、開放膨張量試験、促進膨張量試験を行う。これにより、アルカリシリカ反応によるコンクリートの膨張性を確認する。また、採取コアにより、SEMや偏光顕微鏡によりアルカリシリカゲルの有無を調査する。
問3 アルカリシリカ反応による変状を特定し、その変状の原因がなぜ起きたか下記に記述する。①当該構造物の完成年が1974年であり、アルカリシリカ反応抑制対策がとられる以前に建設された構造物で、有害鉱物を含む骨材がコンクリートに含まれていた可能性があった。②そして、4階部分には内在塩分が含まれていた可能性があり、塩化ナトリウムによる高アルカリの供給や、踊場であるため、雨水による水分の供給があり、アルカリシリカ反応が発生しやすく、生成されたアルカリシリカゲルが吸水膨張しやすい条件であった。以上のように推測する。
