対象構造物は、温暖な内陸部(海岸線から約1km)に設置された、建設後40年を経過した鉄筋コンクリート造建築物である。

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問1 当該建築物の柱、梁および壁にひび割れが発生した原因として、ASRによるものと推定する。推定理由は、①表2より、コンクリートに使用している粗骨材が、安山岩であり、シリカ鉱物を多く含んでいる可能性があること、②表2より、呼び強度が大きいことから、単位セメント量が多く調合され、コンクリートの含まれているアルカリ量が多かったこと、また、セメントの全アルカリ量も比較的多いこと、③写真より、変状発生箇所が屋外であり、降雨等により、コンクリートに水分の供給があったこと、④ひび割れの発生状況が、亀甲状に発生しており、ASR特有の発生状況であること、である。変状の進行度合いとして、発生しているひび割れの幅から、柱の面Aと梁が大きく進行しており、次に柱の面B、一番軽微な箇所が壁であると見られる。この進行度合いの違いに影響を与える要因としては、①アルカリの供給量の違いが考えられる。柱および梁は、工場1で製造されたコンクリートを使用しており、表2より、細骨材に海砂を使用している。建設時期が1980年代初期であり、骨材の不足により海砂を使用したことが考えられ、除塩不足の可能性がある。この海砂に含まれるナトリウムイオンがアルカリの供給源となり、ASRの進行を促進したことが考えられる。柱及び梁のコンクリートを製造した工場1に対し壁をのコンクリートを製造した工場2は、海砂を使用していない。②水の供給量の違いが考えられる。柱の面Aと梁は、屋外の外面であることから、降雨の影響を大きく受ける、柱の面Bは、屋外であるが、写真2の水がかりの状況から、面Aに比べ降雨の影響を受けにくかったと見られる。壁は上部に庇があるため、降雨の影響を受けにくかったと考えられる。

問2 原因特定のための調査として、ASRゲルの発生の有無を調査する。目的は、ASRゲルの判定である。調査方法としては、SEM‐EDSによる観察および元素分析を行ったり、偏光顕微鏡によりASRゲルやリムの有無、ひび割れの発生状況を観察する。対策を検討するための調査として、残存膨張性の有無の調査をする。目的は、今後の膨張に対する対策の要否を判断するためである。調査方法としては、解放膨張率試験と促進膨張率試験を行う。

問3 劣化の進行度合いの著しいものの対策案として、ひび割れ発生箇所の内部鉄筋の腐食状況を確認し、腐食や著しい腐食による断面減少又は破断等があれば、防錆処理や鉄筋補強等を行う。選定理由としては、構造耐力の確保である。劣化の進行度合いが軽微なものの対策案として、水分の供給の遮断を行う。ひび割れの補修をしたあと、コンクリート表面に表面被覆又は表面含浸等により表面保護を行い、降雨によるコンクリートへの水分供給を遮断する。選定理由としては、ASRによる変状の進行抑制である。