
問1 対象構造物は、北陸地方の海岸に面した場所に建設され、約20年を経過した建物である。下記に問いについて記述する。この建物の変状の原因として、①塩害、②凍害、③中性化、と推定する。その推定根拠として、①塩害。立地環境が海岸沿いであることから、飛来塩分の影響を大きく受ける箇所であること。発生している変状が、コンクリートのひび割れであり発生状況から、鉄筋に沿ったものであり、鉄筋腐食に起因する変状と考えられること。また、ひび割れからは、錆汁が発生しており、鉄筋腐食を発生していること。②凍害。寒冷地であり、凍害が発生する環境であること。また、変状が発生している箇所は、日射の影響を受けやすい外壁であること。③中性化。コンクリート外壁の表面には、直接リシンが吹き付けで仕上げられているが、表面被覆等のように透気性を遮断する効果はないので、中性化する構造であった。
問2 主要な変状の原因として塩害を選択し、下記に問いについて記述する。詳細調査と必要な理由として、①塩化物イオン濃度の調査。変状発生箇所を含め、各箇所において塩化物イオン濃度を調査し、その浸透深さ、鉄筋かぶりとの関係を確認し、塩害による鉄筋腐食であることを調査する。②内部鉄筋の腐食の有無、腐食の程度の調査。変状が発生している箇所の内部鉄筋をはつり出し、鉄筋の腐食の有無や断面欠損等の腐食の程度を調査する。③中性化試験。中性化と塩害の複合劣化の有無を調査する。
問3 劣化の状況として、腐食ひび割れや錆汁が見られることから、劣化の程度として、塩害の加速期前期と推定する。必要な補修方法として、①塩化物イオンの除去。塩化物イオン濃度調査結果に基づき、腐食発生限界塩化物イオン濃度以上となっているコンクリートを除去し、内部鉄筋の防錆処理又は添え筋、交換等の補強を行う。その後、ポリマーセメントモルタルにて断面修復する。また、脱塩工法も検討する。②表面保護工。塩化物イオンの除去が完了したコンクリート表面に対し、表面被覆工法等を行い、補修以降にコンクリート内部に塩化物イオンが浸透することを防止する。表面保護工の代替として、電気防食工法についても検討する。
