問1 対象構造物は、太平洋沿岸の海岸線に位置する竣工後30年が経過した道路橋PC単純桁である。劣化の状況として、桁の下端隅角部に鉄筋腐食に伴うかぶりコンクリートの剥落が見られる。鉄筋は露出し腐食や断面欠損が見られるが、PC鋼材においては腐食がなく、健全な状態である。橋梁全体として、ひび割れ等その他の変状は特に見られない。劣化の状況を踏まえ、現在の橋梁の性能上の所見として、変状が見られる桁下端隅角部の鉄筋に腐食や断面欠損があるものの、引張り応力を負担するPC鋼材が、劣化の著しい箇所で健全であることから、性能上大きな問題は無いと考える。

問2 今後30年間においてこの橋を供用するための補修・補強計画の立案に必要な詳細調査項目と理由を述べる。①載荷試験等による耐荷力の調査。現状の耐荷力を把握し、補強の必要性や補強工法の選定の際の判断材料とする。②自然電位法による鉄筋腐食調査。当該橋梁の立地箇所が海岸線であることから、橋梁全体が塩害を受けていることが考えられるため、変状が見られない部分も劣化が進行していることが考えられる。自然電位法により鉄筋の電位が低くなっている箇所を特定し、内部鉄筋の状況を確認・補修のための基礎材料とする。③現地コア採取やドリル法により塩化物イオン濃度調査を行う。当該桁において10年前に塩害対策として、表面被覆が施工されているが、変状が発生していることを考慮すると、コンクリート内部に侵入した塩化物イオンの除去が不十分であった可能性や、表面被覆の劣化によりその効果が減少した可能性があるため、コンクリート表面からの塩化物イオン濃度調査を行う。変状発生の原因を推定する資料として又は、補修時のコンクリート除去深さの判断材料として利用する。

問3 上記調査により想定される結果と結果に対する補修・補強計画について述べる。①耐荷力調査の結果としては、PC鋼材が健全であることから性能上問題ない結果になると想定す今後の予防として補強すると考えるなら、桁の下面に鋼板やFRPを接着させ、又は鉄筋とる。ポリマーセメントモルタルにより下面増厚をして、曲げ耐力を向上させる。あるいは鋼繊維補強コンクリートにより上面増厚を行い、曲げ、せん断耐力を補強する。②鉄筋腐食調査の結果として、飛来塩分の影響を受けやすい箇所と受けにくい箇所の差異はあると考えられるが、全体として鉄筋の電位が下がっている箇所が多く見られると想定する。補修・補強計画として、コンクリートを除去し内部鉄筋を露出させ、腐食の有無を確認する。腐食の程度に応じ、防錆処理や添筋による補強を行う。③塩化物イオン濃度の調査結果として、鉄筋付近において、鉄筋腐食発生限界濃度を超えていると想定する。表面被覆工法の塩害等の対策として多く使用されているエポキシ樹脂は、30年程度の耐久性があるため、表面被覆の劣化は考えにくい。そのため、表面被覆前に浸透していた塩化物イオンの除去不足が原因と想定する。補修・補強計画として、腐食発生限界濃度を超えた深さまでコンクリートを除去し、ポリマーセメントモルタルにより断面修復し、表面被覆を復旧する。