
問1 対象構造物は、山陰地方の山間部にある建設後約30年を経過した鉄筋コンクリート造の水路橋の水路部及び橋脚部である。以下に問いについて記述する。この構造部に生じた変状の考えられる原因の1つとして、凍害と推定する。その根拠は、①凍害構造物の立地環境が、山陰地方の山間部であること。②雨と日射の影響を受ける箇所であること。③写真1においては、発生したひび割れにエフロレッセンスが発生しており、そこに錆汁が見られないことから、鉄筋が腐食していない可能性があり、ひび割れ先行型の変状であること。④写真2において、橋脚張出し部において、ポップアウトやスケーリングが見られること、である。
問2 水路部の現状として、劣化の過程は進展期と見られ、微細ひび割れを含むひび割れが発生しており、エフロレッセンスが発生している。しかし錆汁が見られないため、ひび割れの深さは鉄筋まで到達していないと考えられる。今後の進行状況として、ひび割れが深さが鉄筋位置まで進行し、腐食が開始する。橋脚部の現状として、劣化の過程は進展期と見られ、コンクリート表面にポップアウト、スケーリングが発生しており、その変状の深さは鉄筋位置までは到達していない。今後の進行状況として、微細ひび割れ、スケーリングが深さ方向に進行し、粗骨材の剥落が発生する。
問3 この構造物の詳細調査として、①コンクリートの物性値(圧縮強度、弾性係数)の試験。変状が発生したコンクリートの健全性の確認のために行う。②内部鉄筋の腐食調査。構造物の耐力低下の可能性を確認する。③凍害の深さ調査。発生した変状による劣化の度合いを確認するため。
問4 この構造物を今後20年程度使用する場合の維持管理計画として、①発生したひび割れにエポキシ樹脂等により注入を行う。②内部鉄筋の腐食調査により、鉄筋腐食が確認された箇所において、内部鉄筋をはつり出し、防錆処理を施し、ポリマーセメントモルタルにより断面修復を行う。③ポップアウトやスケーリングした個所は、緩んだ骨材を叩き落し、ポリマーセメントモルタルにより断面修復を行う。④シラン系の表面含浸材を塗布し、外部からの水分の侵入防止と内部の水分の逸散を期待する。
