
問1 対象構造物は、関東地方の内陸部に建設された鉄筋コンクリート造建築物である。下記問いについて記述する。1階ピロティ部直上の2階床スラブ下面に仕上げ材の膨れとかぶりコにンクリートの剥落が見られる。剥離部分見られる内部鉄筋には腐食が確認できる。この変状の発生原因として、塩害と中性化の複合劣化によるものと推定する。推定理由は、表2より、飛来塩分の影響を受けにくいコンクリート内部の塩化物イオン濃度が高く、表1にある海砂を用いた細骨材による内在塩化物イオンの影響と考えらえられる。1970年代、高度成長期の後半時期に骨材不足により、海砂が用いられ、除塩不足が問題となった背景がある。また、外壁において、中性化が24mmとなっており、中性化フロント現象により、床スラブ下面の30mm付近では腐食発生限界塩化物イオン濃度を大きく超えた濃度となっていた。その結果、写真1に見られるように内部鉄筋が腐食し、その膨張圧力により、かぶりコンクリートが剥離し、仕上げ材が膨れ、最終的にかぶりコンクリートが剥落することになったと考えられる。
問2 仕上げ材が膨れ、最終的にかぶりコンクリートが剥落することになったと考えられる。として、コールドジョイントによるものと推定する。推定理由として、鉄筋方向と考えられない斜め方向に発生していることである。写真3に、1階ピロティ部にある外部柱表面に鉛直方向にひび割れが発生している。このひび割れの発生の原因として、塩害と中性化の複合劣化と推定する。推定理由は、問1に記述した写真1の推定理由と同じであるが、腐食した鉄筋が主筋であるため、その方向にひび割れが発生したと考えられる。写真4に、外部壁表面に、斜め方向にひび割れが発生している。このひび割発生の原因として、乾燥収縮によるものと推定する。推定理由は、ひび割れ発生箇所が窓の隅角部から発生していることや、表1の水セメント比やスランプより、打設時の生コンクリートの配合は水分が多く、完成後に乾燥収縮の影響を受けやすい配合であったことである。
問3 この建物を今後35年間供用するための調査項目として、①鉄筋の腐食状況を調査する。自然電位法により変状が発生していない箇所も含めて調査し、鉄筋が腐食している可能性のある箇所を把握する。②コンクリートの物性値を調査する。変状が発生している箇所において、コアを採取し、圧縮強度試験や、弾性係数試験を行い、物性値に問題が無いことを確認する。必要な対策として、①鉄筋腐食が発生している可能性が高い箇所の内部鉄筋をはつり出し、腐食が確認されれば、防錆処理や補強又は交換等必要な処置を行う。その後はポリマーセメントモルタルで断面修復を行う。はつり出す深さは腐食発生限界塩化物イオン濃度以下となる深さまでとする。②ひび割れ発生箇所においては、エポキシ樹脂等によりひび割れ注入を行う。③今後の飛来塩化物イオン浸透を抑制するため、表面被覆を行う。
