対象構造物は、内陸部の食品工業団地に立地する、供用開始から40年を経過したRC造の汚水処理施設である。

問1 写真1、2に示すA部に、断面欠損、骨材露出、白色の物質の付着が見られる。この変状の原因を、化学的浸食によるものと推定する。原因推定の理由として、①当該汚水施設を流れる汚水に、表3より、汚水に大量の硫酸イオンが含まれており、変状を起こす物質が存在していたこと、②変状の発生状況が、化学的浸食特有の状況であること、③当該施設の流水状況により、汚水に含まれる硫酸イオンが、腐食性ガスを発生させたり、また、二水石こうを生成するなどして、コンクリート表面を浸食したと考えられること、である。また、常時水中部と気中部での変状の差異については、汚水中から発生し、気中に放散された硫化水素が、気中部コンクリート表面の硫黄酸化細菌により酸化され、硫化水素が生成された。この硫化水素がコンクリート表面を激しく浸食し、A部に見られるような断面欠損や骨材露出といった変状に至った。これは、水中部では起こりにくい反応である。

問2 写真3に示すB部に、かぶり部分のコンクリートの剥落や、その内部鉄筋の腐食が見られる。この変状の原因を、中性化によるものと推定する。原因推定の理由として、①変状発生箇所が曝気槽内部で、設備の機能として、二酸化炭素が多く発生する状況であり、その結果、変状発生箇所近傍での二酸化炭素濃度が、通常より高い濃度となっていたこと、②変状の発生状況が、鉄筋腐食の膨張圧によるかぶりコンクリートの剥落と考えられ、中性化による変状の代表的なものであること、である。

問3 A部における調査項目として、①変状箇所に発生している白色の物質の成分分析を行い、二水せっこうであることを確認する、②変状箇所からサンプルを採取し、EPMAにより、硫酸イオンの侵入状況を分析したり、SEMにより、エトリンガイトの生成状況の調査を行う、③コンクリート内部の鉄筋をはつり出し、腐食状況を調査する。B部における調査項目として、①中性化深さの測定、②EPMAにより、炭酸化の進行状況を調査する、③曝気槽内部以外の二酸化炭素濃度を測定し、その濃度差を確認することにより、曝気槽内部で起こった変状が、曝気槽内部の高濃度の二酸化炭素によるものであることを確認する。当該施設を今後30年間使用するための補修方法として、①A部、B部ともに劣化部分の除去を行う。A部においては、硫酸イオンが浸透しているコンクリートの除去を行い、Bにおいては、中性化した部分のコンクリートを除去する。除去した部分のコンクリートは、ポリマーセメントモルタルで断面修復をする、②コンクリートを除去し、鉄筋が腐食していた場合は、防錆処理を行い、断面減少していた場合は、添筋による補強や鉄筋の交換等を行う、③表面被覆を行い、今後において、硫酸イオンや二酸化炭素の侵入を防止する。