Exif_JPEG_PICTURE

 対象構造物は、関西地方の沿岸部に位置する建設後約40年を経たRC造建築物である。

問1 写真1に本棟外壁(南側)上部に発生したひび割れ(最大ひび割れ幅0.3㎜)が見られる。ひび割れは外壁端部に逆ハの字に発生している。ひび割れ発生の原因推定として、屋上コンクリートが日射により温度上昇し、膨張することによって発生したものと推定する。対策としては、日中の温度差によるひび割れの挙動に対し追従性のある材料を用いて、ひび割れ注入する。

 写真2に本棟外壁(西側)下部に発生したひび割れ(最大ひび割れ幅0.4㎜)が見られる。ひび割れは写真1と同様に外壁端部に逆ハの字に発生している。ひび割れ発生の原因推定として、乾燥収縮によるものと推定する。外壁コンクリート打設終了後、数年から5年程度の間にコンクリート内の水分が徐々に逸散し、体積が収縮する挙動がある。その挙動を、地中の基礎梁や場所打杭が拘束し、写真のようなひび割れが発生したものと考える。対策としては、ひび割れの成長が収束していると考えられることから、エポキシ樹脂等のひび割れ注入材を使用し補修する。

 写真3に本棟外壁(西側)上部に発生したひび割れ(最大ひび割れ幅0.2㎜)が見られる。ひび割れは水平方向に発生している。ひび割れ発生の原因推定として、外壁コンクリート打設時の不適当な打重ねによるコールドジョイントと推定する。ひび割れの進展は考えにくいため、エポキシ樹脂等のひび割れ注入材を使用し補修する。

問2 当該構造物は、1985年に建設されており、コンクリートの骨材に海砂の細骨材が使用されている。図3より、飛来塩分の影響が少ないコンクリート内部において比較的高濃度の塩化物イオンが存在する。これは、海砂の除塩不足による可能性があり、写真5と写真6のコンクリートに共通して言えることである。これに対し、コンクリートの暴露環境には違いがあり、写真5は本棟内壁、写真6は付帯設備外壁である。この差異は、飛来塩分を受ける量と水分の供給量及び中性化速度に差異が発生する。写真5のコンクリートは、内在塩分があり、中性化は写真6よりも進行している。この中性化の進行により塩化物イオンの中性化フロント現象が発生しているものの、図3より、腐食発生限界塩化物イオン濃度に達していないと見られ、かつ、腐食発生に必要な水分の供給もないため、腐食は発生していない状況と考えられる。写真6のコンクリートは内在塩分と飛来塩分による塩化物イオンの供給があり、写真5より高濃度の塩化物イオンが存在する。外壁であるため、写真5より中性化の進行は遅いが、40年の期間の経過とともに鉄筋かぶり付近まで進行しており、含有塩化物イオン濃度を含めて考えると、不動態被膜は破壊されていると考えられる。そして、中性化フロント現象により、鉄筋かぶり付近の塩化物イオン濃度が鉄筋の腐食発生限界塩化物イオン濃度を超え、かつ水分の供給があるため、鉄筋の腐食が発生したと考えられる。

問3 必要な追加調査の目的として、①外壁が鉄筋の腐食発生の可能性があるため、外壁全体を対象として、塩化物イオン濃度と中性化深さの調査を行う。調査方法として、塩化物イオン濃度は、全塩化物イオン抽出による含有量試験を行い、中性化深さは、はつりによるフェノールフタレイン法により調査する。②現時点で鉄筋が腐食している可能性がある範囲を調査する。調査方法としては、自然電位法による。写真4より、鉄筋腐食による影響が、コンクリートの軽微なひび割れであるため、腐食グレードはⅡ以下であると考えられる。そのため、経済的な対策として今後の鉄筋腐食進行防止を主に提案する。鉄筋の再不動態化のため、亜硝酸リチウムを含有した塗布型防錆剤の塗布。次に、当該構造物の立地環境が塩害環境であり、かつ中性化が進行しているため、ケイ酸塩系の表面含浸材を塗布し、塩化物イオンや二酸化炭素等の劣化因子の侵入予防と中性化コンクリートへのアルカリ付与を行う。