
対象構造物は、供用から73年が経過した、山岳部の人道トンネルの覆工コンクリートである。以下に問いについて記述する。
問1 写真1に、覆工コンクリート表面に白色析出物が見られ、コンクリート表面が浸食されている状況である。変状箇所は、増厚コンクリートにより補修を行っている。
補修に用いたコンクリートの劣化の原因を、硫酸による化学的浸食によるものと推定する。その根拠として、①トンネル周囲では、地表面の岩盤から噴気が見られ、硫化水素の臭いがすることや、トンネル内水路から採取した地下水に硫酸イオンが大量に含まれていることから、当該地域は、温泉地帯であると考えられ、トンネル内部にも硫化水素が存在する可能性が高い。②トンネル内が、温度約40℃、湿度が約90%であることから、化学的な反応が進行しやすく、また、覆工コンクリート表面が結露する可能性がある。③白色析出物の発生状況として、エフロレッセンスのようなコンクリートのひび割れから漏水とともに析出したような状況ではなく、覆工コンクリート全面に付着している状況であることから、写真1に見られる白色析出物は、二水せっこうである可能性が高いこと、である。これらの根拠から推定される劣化に至るまでの過程として、まず、気中に放散されている硫化水素が覆工コンクリート表面の結露水に溶け、硫酸に変化した。その硫酸がコンクリート内部の水酸化カルシウムと反応し、二水石こうを生成した。二水石こうが生成される際の膨張圧力によりコンクリートが破壊された、と推定する。
次に、他の区間に比べB区間の変状著しい理由として、補修コンクリートに使用されたセメントの種類の違いによるものと推定する。A、C区間は、それぞれ高炉セメントB種とC種を使用している。高炉セメントは、潜在水硬性により、コンクリートが緻密になり、かつ、水酸化カルシウムが消費されることにより、二水石こうの生成の反応が緩やかになる。これらの性質から、化学的浸食に対する抵抗性が、普通ポルトランドセメントを使用したコンクリートより大きいため、現状のような状況になったと考える。
問2 変状の原因を特定するための調査の目的と方法の組合せとして、①コンクリート内部に浸透した劣化因子を特定する事を目的として、EPMAによりコンクリート断面において、硫酸イオンの浸透状況として、元素分布の測定を行う。その他、SEMや偏光顕微鏡により、エトリンガイトの生成状況の有無も観察する。②白色析出物の分析を目的として、XRDにより、結晶構造を確認し、二水石こうであることを同定する。
問3 侵食対策の必要な区間は、A区間とB区間とする。補修した後の経過年数による侵食速度係数を考慮すると、A区間は現在から25年後に、B区間は2.5年後に設計有効断面の厚さ300㎜が確保できなくなる可能性がある。
侵食対策の方法として、調査により硫酸イオンの浸透深さを確認した後、その深さまでコンクリートをはつり取り、ポリマーセメントモルタルで断面修復する。除去が完了したか否かの確認として、はつったコンクリートの断面にフェノールフタレイン溶液を散布し、中性化の有無を確認する方法がある。その後、断面修復面にエポキシ樹脂系の材料で表面被覆を施す。
