問1 対象構造物は、寒冷地山間部に位置する建設後約20年を経過した道路橋のコンクリート製橋脚である。橋脚には、最大幅1.5mmのひび割れやコンクリートの浮きが生じている。この変状の原因として、塩害と中性化、凍害が複合的に起因しているものと考えらる。図-4よりいずれの箇所においても塩化物イオン濃度が高く、鉄筋の腐食発生限界塩化物イオン濃度を超えている。これは、当該地域が寒冷地山間部であることから、冬季に散布される路面の凍結防止剤によるもので、雨水とともに、含有される塩化物イオンが継手から橋脚に流下したことが原因としてと考えられる。さらに変状が発生している箇所(①②)においては、表1に示されているように、中性化が他の部分に比べて進行しており、これは、凍結防止剤に含まれる塩化ナトリウムによる高アルカリの供給と、南面向きであるため、日射の影響を受け、他の部分より乾燥しており中性化が進行しやすい状況であったことが考えられる。また、日射による乾燥と路面水の流下による湿潤を繰り返し、塩化物イオンの濃度が高くなっていったことも考えられる。この中性化の進行により①②においては、中性化フロント現象が発生し、最外縁の鉄筋位置における塩化物イオン濃度が腐食発生限界塩化物イオン濃度を超え、鉄筋の腐食に伴う、ひび割れ、かぶりコンクリートの剥離による浮きが生じたと推定する。また、当該箇所が寒冷地であり、変状発生箇所が南面向きであることや、路面水の流下による水分の供給が考えられることから、凍害が発生していたことも考えられる。この凍害と塩害による複合劣化により、変状の進行が大きかったことも考えられる。

問2 この構造物を今後30年程度使用するとした場合の維持管理について、まず、補修として、現在変状が発生している箇所において、浮きが確認されている箇所は、内部鉄筋をはつり出し、防錆処理を施し、ポリマーセメントモルタルにより断面修復する。はつり出す際の深さは塩化物イオン濃度調査結果に基づき、腐食発生限界塩化物イオン濃度以下になる深さまでコンクリートを斫りとる。ひび割れ箇所についてはエポキシ樹脂等の注入を行い、ひび割れを閉塞し、今後の劣化因子の侵入を抑制する。また、変状が発生していない箇所においても、③④に見られるように、コンクリート表面部においては、高濃度の塩化物イオンが浸透しているため、表面部3センチ程度かぶりコンクリートを除去し、ポリマーセメントモルタルにより断面修復する。今後の維持管理のための対策として、路面排水設備の整備や伸縮継手の排水構造の改善を行い、路面排水が橋脚に流下することなく、外部に排水されるような設備の整備を行う。さらに表面被覆を施し、塩化物イオン、二酸化炭素、水分等の劣化因子の侵入を抑制する。